ぐらん亭

【雑談】古典三線曲のご紹介。定番の「かぎやで風」とか。

1017-29

2017年の旧正月は1月28日(土)


今年(2017年)の旧暦1月1日は、
新暦の1月28日(土曜日)です。

一人暮らしのワタシはとりたてて
ごちそう作ったり、お客を招いたりは
しないんだけど、旧1月1日の朝には、
三線弾いて新年を祝おうと思いますよ。

ワタシの愛器の愛称は、ケガしてる三線
これね↓

この5年くらい、遊び弾きの民謡ばかりで
まともに古典を唄ってなかったので、
ここ最近、野村流の古典教本 上
おさらいしていました。

いいお師匠に恵まれたおかげもあって、
ワタシと愛器は、民謡よりも
古典の方がよく響くし、唄えます。

せっかくなので、沖縄の古典三線曲をいくつか
ご紹介します。

ハタチを過ぎてから古典三線を習い始めたけど、
ワタシの両親は伊良部島の出身で、
沖縄本島の方言(ウチナーグチ)が
あんまりよくわからなかったので、
自分で唄ってても意味がチンプンカンプンでした。
手と唄を覚えても、感情がこめられなくて
納得いかなかった。

そこで、補足として、三線の楽譜である
工工四(くんくんしー)とは別に、
この「かなし島歌」という本で、
歌詞の内容と背景を勉強しましたよ。

タイトルの「かなし」は「愛し(いとしい)」、
「島歌」は、八八八六(30文字)で
構成されている琉歌(りゅうか)を指します。

日本に五七五七七(31文字)の和歌があるように、
琉球王国時代は琉歌が詠まれていました。

絶版で入手困難になってるみたいだけど、
ウチナーグチでの挨拶や単語が、
他の地方の方言や万葉集の歌との比較、
言葉を使う場面や
由来や成り立ちなどを交えて、とても丁寧に
わかりやすく説明されてる良書ですよ。

帯に書かれてるウチナーグチは、

ウマリジマ ヌ クトゥバ ワシリタラ
(生まれた島の言葉を忘れたら)
クニン ワシリユン
(国も忘れる)。

御前風(ごぜんふう/ぐじんふう)5曲

沖縄の結婚披露宴や宴会というと、
「唐船ドーイ(とうしんどーい)」という
アップテンポの三線曲で、老若男女が
乱れ舞うイメージが強いですよね。

カチャーシーという踊りで、ワタシは
あの手の動きが苦手なため、
踊らなくて済むよう、三線弾くほうに
まわっているのですがw

唐船ドーイが演奏されるのは宴の締め、
みんなほどよく酔っ払って、
最後を盛り上げるタイミングです。

それに対して、「幕開け」と呼ばれる、
宴の始まりに唄われる曲があります。

それが御前風(ごぜんふう/ぐじんふう)です。

琉球王朝時代、王様の御前で
演奏されていたことから、この名前が付きました。

正式には、御前風五節といい、下記の
5曲をまとめて呼びます。

古典曲には唄の格というものがあり、
この5曲は特別、格の高いものとされています。

ただし、5曲も弾き唄うとなると
かなり時間がかかってしまうため、
一般的に現代では
「かぎやで風」だけを弾くのがほとんどです。

「かぎやで風」だけを指して、「幕開け」と
呼ぶこともありますよ。

次のページから、この5曲の歌詞などを
紹介していきます^^

沖縄古典三線曲の中でも、
御前風と呼ばれる、
最もメジャーな5曲をご紹介します。

1.かぎやで風(かじゃでふう)

【歌詞】
今日のほこらしや なをにぎやなたてる
(今日の嬉しさを、何に例えられるだろうか)
つぼでをる花の 露きやたこと
(まるで、花のつぼみが、露を受けたようである)

5曲のうちでも、いちばんメジャーで、
いちばん格が高いとされている曲です。

沖縄本島の結婚披露宴では
新郎側の親戚の若い女性がこの曲を舞って、
宴の始まりを座に告げます。

「ほこらしや」は「フクラシャ」と発音します。
「誇らしさ/嬉しさ」という意味。

花の蕾が露を受けて輝いているように、
今日はとにかくうれしい、めでたい!」という
内容の琉歌ですよ。

この琉歌が「かぎやで風」と呼ばれるようになった
由来については、次のような話が伝わっています。

第二尚氏王朝の尚円王は即位する前、
沖縄本島の北部で、
地元の民から危害を加えられそうになり、
ある鍛冶屋に助けられました。
尚円王を山の中に匿い、
こっそりと食べ物を運んで与えた鍛冶屋は
王の即位後、そのときの功によって出世。

功が報われることや幸運にあやかる意味で、
この琉歌を「鍛冶屋手(かじゃで)風」と
呼ぶようになった、と言われています。

格調の高い、荘厳な曲です。
これをやたらと早く弾くのは、
民謡弾きのうちの父親。
なにもかも台無しになるので、
(そもそも、早いと舞いにくいよ)
唄いながら自分が眠くなるくらい、
ゆっくりと弾くのがよいです。
というか、ゆっくりが正しい。

2.恩納節(うんなぶし)

【歌詞】
恩納松下に 禁止の牌の立ちゆす
(松の下に、村から出てはいけないと札が立ったが)
恋忍ぶまでの 禁止やないさめ
(恋しい気持ちまでは、止めることはできない)

女性歌人、恩納なべ(ナビィ)の作。
ナビィは、農民でありながら、琉歌を詠む才女だったそうです。
庶民の素朴な気持ちを歌った琉歌を
数多く残しています。

琉球王国時代、農民はそれぞれの村(間切)から
勝手に移動することを禁じられていました。

別の村の若者に恋した娘が、
恩納の松の木の下の「移動禁止」の札を
前に、それでも彼への気持ちまでは
誰にも止められない、止める権利なんかない!
立ちつくしている、そんな情景ですね。

YouTube でお気に入りの動画や音楽を楽しみ、オリジナルのコンテンツをアップロードして友だちや家族、世界中の人たちと共有しましょう。

可憐な若い女性がこれを舞うと、
がんばれ負けるな未来は明るい!
唄いながら心から応援したくなる^^

優美な中にも、芯の強さを感じさせるような
曲調ですよ。

3.長伊平屋節(ながいへやぶし)

【歌詞】
とれの伊平屋岳や うきあがてど見ゆる
(凪いでいるときの伊平屋岳は、海から浮き上がって見える)
遊でうきやがる 我玉黄金
(同様に、遊ぶ子供たちの中で、我が子が浮き上がって見える)

古い沖縄の言葉で、子供ことを玉黄金(たまぐがに)と呼びます。

子どもは玉であり、黄金である。
なによりも尊い、大事な宝という意味ですね。

空が青く澄み、青い海が凪いでいるとき、
対岸から眺める伊平屋岳はまるで、
浮き上がって空に浮かんでいるように見える。
同じように、他の子たちと遊んでいても、
親の目には我が子だけが浮き上がって見える。

我が子は特別!うちの子がいちばん!という
親心が率直に歌い込まれています。

これは、動画が見つからなかった・・・。
理由はなんとなく、わかる。
長すぎるからです、たぶん。

次のページに続きます^^

御前風五節のご紹介、後半です。

4.特牛節(こてぃぶし)

【歌詞】
常葉なる松の かわることないさめ
(常緑である松は、変わることがない)
何時も春来れば 色どまさ
(どんなときでも春が来れば、緑を増すのだ)

いつも変わらず緑を保つ松のように、
年を経ても若々しくあろうという、
長寿を寿ぐ一曲です。

長寿と健康を祝う歌詞にふさわしく、
とても華やいだ感じの曲です。
若衆姿の舞い手が凛々しく舞うのが、
見ていて気持ちよい。

この琉歌には、特別な牛が特別な草を好むように、
我らのような若者は花やかさを好む、という内容の
元歌があるらしく、それが特牛節という
曲名の由来だそうですよ。

5.中城はんた前節(なかぐしくはんためーぶし)

【歌詞】
飛びたちゅる蝶 まづよ待て連れら
(飛び立とうとする蝶よ、少し待って、私も連れていってくれ)
花のもと我身や 知らぬあもの
(私はまだ、花を知らない身なのだから)

蝶=友達、花=遊郭のこと。

遊び慣れた友達に、遊郭に行くなら、
ちょっと待て!俺も連れてってくれ!
行ったことないから一緒に!

せがんでいる若者の図w

YouTube でお気に入りの動画や音楽を楽しみ、オリジナルのコンテンツをアップロードして友だちや家族、世界中の人たちと共有しましょう。

歌詞の内容を知って唄を聞くと、
浮かれてるというか、ふわふわして
聞こえるから不思議です。

曲名の「中城はんた前」は、久米島の地名らしいです。
これも原歌があるそうですが、
ワタシはよく知らない・・・。

古典の曲名に、歌詞とのつながりを
探すのは難しいので、素直に
「こういう名前なんだ」と思うのがいいですね。

以上、旧正月前ってことで、
沖縄でめでたいときに唄われる古典三線曲、
御前風の5曲をご紹介しました!

機会があったら、他の曲も紹介したいと思います^^

モバイルバージョンを終了