スポンサードリンク

【雑談】愛器その2が帰ってきましたよ

むしろ傷を誇れ

グランドピアノに次ぐもうひとつの愛器、
我が左手に長く馴染んだ
三線(サンシン/三味線/蛇皮線)を
実家から引き取ってきましたよ。

ワタシの実家には、三線が五丁あります。

1.ワタシの練習用
2.ワタシの本番(舞台)用
3.父の練習用
4.父の本番(舞台)用
5.伯父の形見

この五丁の中で一番古く、
一番音質が良く、一番音量豊かなのが、
2.の、今回戻ってきたワタシの愛器。

21歳で習い始めた古典三線の
恩師から譲られた、昔三線(ンカシサンシン)です。

161104

スポンサードリンク

現行の三線よりも首がほっそりとしていて、
手の小さいワタシでも尺が押さえやすいですよ。

三線を習いたい!と思ってあちこちの
民謡教室、古典教室の門を叩いては
「経験者以外はお断り」と門前払いされつづけた
素人のワタシを、最後の弟子として
歓迎してくださった師匠から譲られた、大事な愛器です。


ワタシが入門したときにはすでに
70歳を超えていらした師匠は、
女性の唄者(ウタサー)としては非常に珍しく、
長年にわたって沖縄タイムスの芸能選考会の
審査員を務めておられました。

「唄には、力がある。
三線する人は、唄しないとならんよ。
唄する人は、こうでないとならんよ」

徹底的に工工四(クンクンシー)と
古典の唄い方を教え込んでくれた師匠です。
結局、三線の基本は、古典。

古典が弾けたら、民謡は、耳で覚えて
即興できる。みんな自己流だからと
苦い顔で教えてくださったのも、師匠でした。

早弾きの苦手なワタシですが、民謡なら
だいたい何でも耳コピできるようになったのは、
愛情と厳しさをもって、指導してくださった
師匠との出会いあってこそ、でした。

スポンサードリンク

師匠が手にしてから、
すでに30年くらい経っているという三線を
ワタシに譲ってくださったのは、
入門して2年目、タイムスの新人賞を
最初の挑戦で受賞できた直後でした。
ワタシの声質に合っているから、と。

それから、優秀賞を受賞するまで何年も、
常にこの三線は、ワタシと一緒に
唄ってくれました。

譲られたときから、この三線の棹には
くっきりと、削られたような傷がありました。
だから、ワタシの実家での通称は、
「ケガしてる三線」でした。

師匠も、いつからあるのかわからない、と。

もしかすると、何十年も前から
手にしていた師匠の手に渡ってくる前から、
ついていた傷なのかもしれません。

実家の他のどの三線よりも柔らかく、
そして高らかに響き、
父の知遇の民謡の先生たちに
「上等な音だね。沁みる。
ンカシ(昔)三線はいいね」と
羨ましがられるワタシの愛器には、傷があります。

こんなにいい三線に傷なんて、
もったいない、と思う人もいると思う。

傷がなければ、もっといい音が
出たかもしれないのに、と思う人もいると思う。

ワタシも、ずっとそう思ってましたよ。
この傷のせいで、響きが損なわれてる、と。

でも今は、心の底から、
この傷があってよかった、と思うのです。

ワタシの贔屓目を抜いても、
傷のあるこの三線の音は、
傷のないピカピカの三線をいつも、
遥かに凌駕しています。

「直せない傷、だから何?

こんな傷は、ハンデにもならない。

この傷があって、ちょうどよかった。
格の違いや質の高さを証明できた。

傷ついてこそ、上がる価値が、この世にはある。

だから、傷を嘆くな。
むしろ、誇れ。

美しく唄って、傷を惜しむ人に教えてやれ。

この傷は、響きの一色となって、
傷なき人すら涙する情を唄うのだ、と」

そんなふうに思っていますよ。

傷を嘆くな。
むしろ、誇れ。

これは、この三線と一緒に13年以上、
唄ってきたワタシが教えてもらった、
小さいけど重い、確かな真実です。

三線は、音がすべて。
唄者は、唄がすべて。
人はみな、今がすべて。

傷を嘆くな。
むしろ、誇れ。

ワタシが音楽から距離を置いてきた
その理由は、この真実かもしれない。

傷にふさわしい自分に、まだなれてない気がする。

スポンサードリンク

コメント

  1. みん より:

    なるほど!!傷もすべて、なんだったら傷があってこその愛おしさでございますね~。
    もう、まるでちょっとわけありの綺麗なお姉さんみたいな感じでしょうか。
    楽器って、その人だけに出せる音があるように感じます、特に三線は。
    最近、あんまり練習してくれないから、聞いてないな~
    今日は娘に三線の音と歌、聞かせもらおっと!!

    • ぐらん より:

      >みん 様
      こんばんは!
      子みんちゃんは今日、三線弾いてくれたかな?
      過去あり、ワケあり、修羅場くぐってきたぜ感のある
      婀娜な姐さんって、いいですね~~~!
      そういう音が出せたらいいんだけど、
      ワタシの音も唄も、子供っぽいというか、
      マジメな感じがして自分で好かんのですよ・・・。
      人生に渋みと遊びを!を目指して、これからも
      精進してきます!!

Translate »